歯周病患者のインプラント治療│国分寺市の歯医者「こばやし歯科医院」

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歯周病患者のインプラント治療

歯周病患者のインプラント治療について
今までは大きく取り沙汰されてはいなかったですが、近年インプラントの歯周病”インプラント周囲炎”について多くの関心が集まってきています。インプラントは天然歯より歯周病に罹患(りかん)しやすいためインプラント周囲炎により、せっかくおこなったインプラントがダメになってしまうこともあります。正しい知識を持ち、長持ちするインプラント治療を選択しましょう。

1.歯周病患者の口腔機能回復におけるインプラント治療の利点
欠損を伴う歯周病患者の口腔機能回復治療では, 治療後の歯周組織に炎症と咬合性外傷を誘発しないことが重要です。 このため欠損補綴にインプラントを応用することは支持力の低下した残存歯の保護と歯列の連続性の獲得の観点からも利点といえます。また、可撤性義歯の回避、顎骨に支持された強固な欠損補綴装置、支台歯や維持歯に対する補綴的な負担の軽減 咬合の安定性確保、修復補綴治療に伴う天然歯の削合の回避 咀嚼効率の向上や審美的な改善が得られる可能性があります。しかし、これが歯周病罹患歯に対する純然たる抜去の基準とはなりえないです。 すなわち、インプラント治療は現在では高い予知性をもって応用可能であるが、抜歯か否かの境界線上の歯については、患者個々に慎重に評価されるべきです。したがって、歯周病罹患歯の抜去やその後のインプラント治療の適用における厳密な基準が存在しない現時点においては、患者の希望を聴取し、歯科医師が十分な検査を行い、その結果に基づいたインフォームドコンセントにより判断すべきであるといえます。


2.インプラント周囲組織の構造
歯周組織と比較すると、インプラントの周囲組織の機能と構造にはいくつかの明瞭な違いがあります。歯周組織の場合、重要な特徴として歯根膜や骨縁上結合組織があげられ、歯は歯根膜や結合組織線維を介して歯槽骨や骨縁上歯肉結合組織によって支えられています。それに対して、骨組織と直接的に結合 (オッセオインテグレーション)するインプラントにはセメント質が存在せず、歯根膜を含む結合組織性付着はまったく認められないです。その結果、インプラントには生理的動揺が認められません。また、天然歯と異なり、歯肉組織とインプラントの接着機構は上皮付着のヘミデスモソームのみで形成されており、上皮性付着根尖側端から骨頂にかけて歯肉線維はインプラント表面に付着しておらず、インプラントと並行に走行しています。

3.歯周病患者へのインプラント治療に対する考慮


①インプラント治療に先立つ歯周治療の重要性
インプラントは口腔内に埋入されると同時に口腔内の細菌による感染にさらされます。インプラントと上皮の付着様式と天然歯と上皮の付着様式に大きな違いは認められません。しかし、天然歯と異なり、上皮下の歯肉線維はインプラントと並行に走行し、プロープの挿入に抵抗する歯肉線維の走行が存在しないです。そのため、外来因子が組織内に移行しやすく、天然歯と比べて感染に対する抵抗力が弱いです。歯周病患者におけるインプラントの成功率は非歯周病患者より低く、インプラント
周囲炎の発症率が有意に高いことが報告されています。 また、インプラント周囲病変の病原細菌は歯周病の病原細菌と同じ嫌気性グラム陰性菌であり、これらの細菌が天然歯の歯周病部位からインプラント周囲溝に伝播、感染することが示されています。このような事実から、インプラント埋入前には口腔内から歯周病原細菌を可能な限り減少させるため、残存歯に対する適切な歯周治療が必要です。 歯周治療の効果については、歯周組織検査だけでなく、細菌学的検査 (細菌検査あるいは血清の細菌抗体価検査) による評価を行うことが望ましいです。


②インプラント周囲粘膜炎・インプラント周囲炎に対する注意
インプラントの適応範囲は広く、無歯顎患者や歯の部分欠損患者の他に顎顔面の変形を有する患者、さらに矯正治療の固定源としても応用されています。そのためインプラントが口腔内のあらゆる欠損に対して応用されるようになった反面、プラークコントロールの不良な歯周病患者に対するインプラント治療後には歯周組織と同様に、インプラント周囲に炎症が惹起され、歯肉炎や歯周炎と類似した臨床像や病理組織像を示します。インプラント周囲粘膜炎 (peri-implant mucositis) やインプラント周囲炎 (peri-implantitis) という新たな問題も生じてきています。 インプラント治療の不成功の原因は、外傷性のものと感染性のものとに分類されており、細菌感染によりインプラント周囲炎を生じたインプラント周囲からは、同一口腔内の歯周ポケット内に存在する類似の歯周病原細菌が検出されています。


③インプラントへの外傷に対する注意
外傷が原因となり骨結合 (オッセオインテグレーション) を喪失 (ディスインテグレーション)したインプラントの細菌叢はインプラントが安定していたときと類似していることが知られています。
そしてインプラントに細菌感染と過度の外傷力とが同時に作用した場合に、急速に顕著なインプラント周囲組織の破壊が生じます。 他方、補綴学的見地から考えた場合、歯周病による骨組織の広範な破壊により、短いインプラント体の埋入と長い上部構造というクラウン-インプラント・
レシオ(CI レシオ) の逆転現象も生じてしまい、これもインプラントへの過重負担につながっています。 このように, 歯周病患者に対してインプラント治療を行うにあたっては、細菌感染と外傷力の両面においてとくに注意を要する事柄や重要な治療指針が存在すると考えられます。したがって、歯周病患者に対してインプラント治療を行う場合、欠損歯数や欠損部顎堤の状態の他に、歯周病のリスクファクターに対する管理と、インプラントに対するリスク管理の双方に配慮する必要があると考えられます。

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