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歯周組織再生療法について②
歯周組織再生療法の術式と特徴について
歯周組織再生療法は複数の術式を有している。今回はその術式と特徴について紹介します。
①骨移植術
骨移植術は、骨欠損部の再生による歯周組織の安定、歯の支持増強による機能性、審美性の確保を目的として行います。 同種他家骨移植や異種骨移植もありますが、 骨移植材として, 安全性の点から自家骨移植と人工骨移植 (ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、 炭酸アパタイトなど) が多く用いられています。
【特徴】
あらゆる形態の骨欠損や、 根分岐部の骨欠損に応用されますが、 移植材を保持する骨壁数が多いほど良好な骨再生が期待されます。 また、骨移植は GTR 膜や EMD と併用して臨床応用されているが、慎重に考慮したうえで適応する必要があります。
②組織再生誘導法 (GTR法)
GTR 膜を用いて、歯周組織の治癒過程における歯肉上皮や歯肉結合組織の歯根面への伸展、接触を防ぎ、歯根面に結合組織性新付着による歯周組織の再生を図る手術法です。
【特徴】
適応症は、2壁や3壁性の垂直性骨欠損および2度の根分岐部病変です。 垂直性骨欠損、2度の根分岐部病変では、GTR法はフラップ手術と比較して有意なアタッチメントゲイン、垂直性骨欠損の改善が認められます。 しかし、3度の根分岐部病変においては、再生が得られるという明確なエビデンスはありません。
③エナメルマトリックスタンパク質を応用した手術法
アタッチメントロスを生じた歯根面に対して、幼若ブタの歯胚より抽出・精製したエナメルマトリックスタンパク質を主成分とするエナメルマトリックスデリバティブ (EMD) 適応することで、セメント質を誘導し、 歯周組織の再生をはかる手術法です。
【特徴】
適応症は、2壁性や3壁性の垂直性骨欠損ですが、1壁性骨欠損に応用する場合もあります。EMD は、術後1年のプロービングデプスやアタッチメントゲインについて、GTR法 (非吸収性膜)と同等の結果を得られると考えられます。分岐部病変においては、EMD はフラップ手術と比較すると、アタッチメントゲイン,、垂直性骨欠損の有意な改善の報告もありますが、現在、EMD の国内における適応症に根分岐部病変は含まれていないため、実施において慎重な態度が必要です。適応に際しては、歯根面の処理 (EDTAなど) を行う場合があります。
④塩基性線維芽細胞増殖因子 (basic fibroblast growth factor: FGF-2) 製剤を応用した手術法
歯周組織欠損部へFGF-2 製剤を局所投与することで歯周組織再生を誘導する手術法です。FGF-2 は、創傷治癒のカスケードの上流に作用し、治癒を促進させるサイトカインです。FGF-2の投与により歯周組織幹細胞の増殖・遊走が促進、血管新生が誘導され,、早期に歯周組織が再構築される局所環境が整うことで歯周組織再生が促進されると考えられます。2016年に日本発世界初の歯周組織再生剤として 0.3% FGF-2 製剤に製造販売承認が与えられ国内で販売されています。
【特徴】
適応症は、プロービングデプスが4mm以上、骨欠損の深さが3mm以上の垂直性骨欠損です。歯根面処理を行う必要はなく、 骨欠損部に塗布します。禁忌は口腔内に悪性腫瘍のある患者またはその既往のある患者であり、術前に十分な検査を行う必要があります。
⑤その他の生物学的生理活性物質を応用した手術法
血小板由来増殖因子 (platelet-derived growth factor PDGF) のBB アイソフォーム (PDGF-BB)に骨移植材であるリン酸三カルシウム ( β-TCP) を併用した再生材料は、米国で商品化され、歯周組織再生療法として利用されています。 また、自己の血液から血小板に富む成分を分離し、PDGFをはじめとした生理活性物質を作用させることで歯周組織再生を狙う多血小板血漿療法 (platelet rich plasma therapy: PRP療法) も臨床応用されています。
監修者情報
こばやし歯科医院
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